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アイデンティティを拡散させず確立するために必要なこと

2018.3.2

アイデンティティという言葉をご存知でしょうか。一言でいうなら「自分はいったい何者なんだろう」と考える自己意識のことです。

青年期にアイデンティディを確立できないと、その後の人生にさまざまな影響が出てきます。

人生を豊かにするために必要なアイデンティティの「拡散」と「確立」について考えてみましょう。

現代社会はアイデンティティが確立しにくく、逆に拡散しやすい

20世紀末頃までは学校を卒業し成人になると、「自己アイデンティティ」は自然に確立できるものだとされていました。

職業に従事するなどの社会的属性や、結婚による家族の形成によって生まれるのが自己アイデンティティとされていました。

もちろん、現代でもそれは存在しています。職業などの属性に関しては「社会的アイデンティティ」と呼ぶこともあります。

就職して「会社員」としての職業意識をもつ、夫や妻・父や母となることが社会に適応するための安定した「自己アイデンティティ」を確立しやすくなると考えられていたのです。

しかし、現代の、特に先進国と呼ばれる国々では、かつてのような自己アイデンティティの確立は困難になっています。

高学歴化やフェンダーフリー、未婚・晩婚、フリーターやニートといったものが顕在化したことで、自己アイデンティティが確立せずに「拡散」しやすい状況になっているといえます。「

青年期はアイデンティティ確立の基礎固め。拡散は心の病に?

「青年期」とは、アメリカの発達心理学者、エリクソンが提唱した考えの一つで、13~21歳頃の時期を指します。

人間の心理社会的発達を8段階に分割した第5段階のこと。

青年期に対応する心理的側面は「同一性」と「同一性拡散」であるとされます。

青年期は第二次性徴の時期に重なる、男女の性差が体に現れる時期でもあります。

この時期は、自分が他人からどう見られているか、どう思われているかが気になり始めます。つまり「自分は何者か」という問いに気づき始める時期でもあるわけです。

エリクソンによると、この時期に自己の存在についてアイデンティティの基盤が作られる時期。

何かしらの理由で、アイデンティティの基盤を作り上げられなければ、その後もアイデンディディの混乱した状態が続き、精神的不安定さに繋がるというのです。

そうなると、ちょっとしたきっかけで「心の葛藤」が「心の病」になってしまう可能性を秘めています。

社会問題の○○等はアイデンティティの拡散・確立に関係がある

後期青年期になると、これから大人として社会に出て行く心構えを作らなければなりません。この時期をモラトリアムと表現することもあります。

そこで自我同一性症候群などが引き起こされてしまった場合、自意識が過剰であったり社会での自分自身を適切に定義することができななくなることがあります。

周囲はみんな「良い」と思うものに対して嫌悪感を抱く。

親や恋人など、特定の相手に対する依存や、逆に孤立。

対人関係を築けない。

近年問題になっている引きこもり、ニート、不登校などはアイデンティティが拡散している予兆ともえるのかもしれません。

職業で社会的な役割や責任を持つことは、ストレスがかかり、それが原因の一つとなって自己意識の安定を妨げるとも言われています。

自我同一性が不安定になってしまう経験があると、中年期以降になってから再度現れることもあるのだと言われています。

アイデンティティの確立は、人生そのものに大きな影響がある

アイデンティティ(自己)の確立は、人生の生き方の指針でもあり、就職や結婚での選択にも大きく影響します。

それほど青年期にアイデンティティを確立することは、人間にとって重要なことだと言えるでしょう。

この時期、「こうありたい」という理想の自分と、現実の自分との違いに悩むことも多いものです。

そうして悩み考え、経験を経ていく中でアイデンティティは確率されていきます。

しかし、近年は青年期にアイデンティティを確立できないまま大人になることも多く、精神発達に良くない影響を与えています。

もしろん、青年期以後の経験や環境の変化でアイデンティティは変化していくものです。

ただ、青年期の発達は非常に重要なもの。子供たちが成長し、青年期を迎えた時、その定義や発達段階を理解してアイデンティティの確立のためにサポートすることも必要なのです。

アイデンティティを構成する4つの要素。そのバランスも重要

アイデンティティとは、4つの側面を持っています。

◆自己斉一性・連続性

自分はずっと「自分」であり、過去から現在、現在から未来へと連続した時間軸に存在し続ける感覚。

◆対自的同一性

自分がしたいことや行きたい方向性を理解しているという感覚

◆対他的同一性

他人が見る自分と、自分が考えている自分像が一致している感覚

◆心理社会的同一性

自分が社会と適応的に結びつき、関係しているという感覚。

この4つの側面をバランスよくもつことで「自分は自分なのだ」という感覚をしっかりと感じ、確率していくことに繋がるのです。

青年期を過ぎても、人は一生この感覚を抱き、変化しながら自分を探して生きていくのです。

自分とは何か。自分はどこへ向かって行くのか。考えたことはありますか?

この記事の編集者

意味ペディア編集部

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